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慢性的な痛みの正体

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鎮痛薬というのは一時的な生体への化学的作用によって「痛みを抑えている」だけですから、例えば「虫歯で痛みが止まらない」とか「骨折をして痛みが引かない」といった場合には、器質的な原因が特定されているので鎮痛剤を使用していても全く問題がないわけです。

これは要するに「痛みの原因が解消された場合には、痛みが出現しない」ということが解っているので、治療を行って完治してしまえば、その後は薬を飲む必要は無い・・・ということが解っているからであります。

ところが慢性痛の場合に鎮痛剤を使用していると、どういうことになるかというと・・・まず下記の文段をお読みになると御理解を得られるのではないかと思います。


<慢性痛の発生機序>

体のある部位に刺激が加わる
      ↓
脊髄(脊柱内部)を介して刺激が大脳に伝わる
      ↓
自律神経のうちの交感神経が興奮する
      ↓
副腎髄質からアドレナリンを分泌
      ↓
末梢血管を収縮させる
      ↓
血液循環の低下が起こる
      ↓
痛みを自覚した部位の筋肉が反射的に緊張を起こす
      ↓
筋緊張が更に血液循環を悪化させる
      ↓
緊張した場所の酸素量が低下して、ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、カリウムイオンなどの発痛物質が発生して、更に新たな痛みを引き起こす
(東洋医学研究所所長/黒野保三著書より)

慢性痛を簡単に説明すれば、痛みがあるとまず筋肉が緊張して、その筋肉が緊張した状態が持続することによって、今度はその部位の血行が悪くなります。

そうすると痛みを引き起こす物質がその痛みを感じている部位に滞(とどこお)るため、更に筋肉が緊張していく事によって更に痛みが増悪することになります。


慢性痛というのはこの悪循環が繰り返されている状態である・・・ということになるわけです。

上記のような機序(しくみ)によって慢性痛自体が悪循環を繰り返している・・・ということになるわけですが、こういった慢性痛の状態にある人達が鎮痛消炎剤(痛み止め薬)を長い間に亘って用いていた場合や筋弛緩剤などの筋緊張を緩める働きのある薬を長期に亘って服用することに関して問題点をまず挙げておく必要があるのではないでしょうか。

筋弛緩剤の問題点:副作用の中には以下のようなものがあります。

1.筋力低下

筋弛緩剤には筋肉の収縮を抑える働きがある為、筋力の低下を引き起こします。

2.倦怠感、眠気

筋肉がしっかり収縮出来ないので体に力が入り辛くなり倦怠感や眠気を引き起こします。(やる気がおきない、元気がなくなる)

3.消化管の蠕動運動を抑制してしまう為、胃腸の働きが悪くなる。(便秘症状、新陳代謝の低下))

それから鎮痛消炎剤の問題点というのは以下のようなものになります。

1.全身の血液循環を抑制する。

2.交感神経を緊張させる為、眠れない、イライラするなどの精神的な影響がある。

3.胃腸障害を起こすことがある。

これらはあくまでも薬を長期的に使用したり、服用する量が適切でない場合や飲み合わせの問題や体質の問題も絡んできますが、薬というものの副作用を知識として学んでおくことは大切なことではないでしょうか。

そして薬というのは、あくまでも「治す」為に作用しているのでは無く、症状自体を緩和させたり抑え込んでいる・・・という事実をまず認識しなければなりません。

原因不明の痛みや慢性痛に対して薬を用いていく場合には、このような薬の一側面や副作用もしっかり認識して私達は服用していくべきで、自己判断の元で服用を続けてしまうと非常に危険を伴うことになります。

化学合成された薬剤に強い体質の人、弱い体質の人がいるのは周知の通りですが、薬の主作用や副作用というものを知らずに長期内服していれば、当然、今までに無かったような副作用の症状が出現してきたり、「二次的な弊害が生じる可能性もある」ということです。

鍼灸治療やマッサージ施療によって副作用の無い鎮痛作用や除痛作用、また全身の血流促進効果を有効に身体に作用させていくならば、恐らくこういった血流障害や胃腸障害などの副作用や二次的な弊害をもたらさずに慢性痛への完治を試みていく事も可能になるでしょう。

一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、特に鍼灸治療はこれらの慢性痛を伴うような傷病に対して、保険療養が認められています。病院(西洋医療機関)で治療を行っていても完治に結びつかない場合、鍼灸治療も最後の砦として行われているという事実こそ、鍼灸治療が慢性痛に適した治療であることを国が認めているということになるでしょう。

いずれにしても痛みの本質的な部分にスポットライトを当てなければ、薬にせよ東洋療術によっても回復の見込みが無いばかりか、薬にも毒にもならないような気休めでは闇夜のカラスを捕まえにいくようなものではないかと思います。

その本質的な部分をどのようにして導き出していくのか?という問題を解決していくことが、私達のような施療家の役割でもあり、様々な臨床経験の中から導き出されてきた「経験医学的側面」を最大限に有効活用しながらクライアントさん達の慢性痛に対応していきたいと考えています。