青少年への薬剤教育とアンチドーピング
最近マスコミでも報道されてましたが、抗インフルエンザ薬の服用でベランダから人が飛び降りて死亡するといったような話を良く聞きます。西洋医薬というのは外見からは判断できないような様々な「脳」への作用があります。例えば鎮痛消炎剤の中には「眠気」を催すので、服用後は車の運転を控えるように促されているものや、アレルギー反応を及ぼす可能性、それから肝障害や腎障害などを起す可能性など・・・それこそ生命保険の契約書に書かれているあの「小さな文字群」のように細かく書いてあります。
プロ野球のトレーナー時代、所謂「ドーピング制度」が日本のプロ・スポーツ界にも取り入れられてきましたが、ステロイド系の薬品や向精神薬などのような神経の興奮を促す類の薬品が入ったものは全てドーピングに引っかかる為、これらの薬を使用させないようNPBのドーピング委員会から通達が出されたのですが、西洋薬というのは様々な化学物質で構成されていますから、それこそ一つ一つの取り扱い説明書をしっかり読んでおかないと、たまたま飲んだ薬にドーピング禁止薬物が入っていて、もしそれを選手が飲んでしまったとなれば大変な騒ぎになる可能性もあるわけです。
私達の身の回りにはあらゆる西洋医薬というものが存在していますが、それらは簡易な言葉で・・・例えば「風邪薬」「痛み止め」だとか「胃腸薬」「目薬」のように「症状」や「部位」によって判断しやすくなっているんですね。しかしこれらの薬品の成分までは通常誰も見ないし、もし読んだとしても「塩酸エフェドリン」だとか「プレドニゾロン」なんて書いてあったって良く解らないわけですよね。
ドーピングというのは「選手の健康にとって潜在的に有害で、かつ/又は競技能力を増幅させる可能性がある手段(物質あるいは方法)を使用すること、あるいは、選手の身体に禁止物質が残存している、あるいは禁止物質、又は禁止方法を使用した証拠が認められることである」とありますが、ドーピング禁止の理由とは「スポーツにおけるフェアプレー精神に反する行為であること」「選手の健康を損ね、場合によっては生命をも奪う危険性を持つこと」「薬物の習慣性や青少年への悪影響など社会的な害を及ぼすこと」というものです。
ですから薬物(医薬品)というのは、健康を取り戻す為のものであるという良い面と、その反対に過剰に服用したり意図的に服用してしまうと不健康になってそれが社会悪に発展する可能性もある・・・という一面を持ち合わせているという認識がされているということになります。
近年、一流大学の学生達が大麻の種をインターネットを介し購入して、自分で栽培しながら大麻を使用して逮捕される・・・といったような報道が流れていますが、薬物の影響というのは様々な形で人間を良くも悪くもするという二面性があるということを感じるのは、こういった大麻に限らず、市販の一般薬であっても同じではないかと思いますよね。
インターネットを介した医薬品販売規制に対して販売する側は異を唱え利用者への配慮や便宜上の問題を掲げていますが、青少年などへの影響を考えると実際は難しい問題ではないかとも思います。いずれにしても私は青少年に対してまず医薬品に関する最低限の知識を学ばせておくことは不可欠ではないかと思いますし、何故ならドーピング規定の中でも謳われている通り、「健康にとって潜在的に有害」である薬や「健康を損ね、場合によっては生命をも奪う危険性を持つこと」という多次元的な薬というものの存在を知っておくことで子供達が自分で薬を服用しようとする際に、しっかりと自己判断が出来る状況が生まれるようになれば良いと思うからです。
アンチドーピングはスポーツ界の次元で起こった自浄問題でもありますが、是非一般の学校教育の中にあっても薬剤(医薬品)に関する常識・問題などを授業の中で積極的に取り上げて欲しいものです。