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野球肩障害のご相談と「大切なこと」

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① 全力投球の半分程度の力で投げれば、それほど痛みを感じない。また投げ方(フォーム)によっては、痛みを感じないときがある。

② 練習の際、キャッチボールを始めてすぐに痛みを感じる。そのまま投球を続けていると、更に痛みが強くなってくるので、おもいきり腕が振れなくなり肘から手首の力を使って投げてしまう。

③ 投球加速期に「脱力痛」を感じるので、おもいきり投げることが出来ないが、肘を下げて投げるとあまり痛みを感じないので肘を下げて投げている。

④ テイクバック時に肩が痛くて肘がどうしても上がってこないので、どうしても肘下りの投球動作になってしまうが、テイクバックの時に痛みが出ないようにすれば、なんとか投げられる。

⑤ ボール・リリース時だけ痛みが強く感じられるので、結局、腕が縮こまったような投げ方になってしまい、勢いのあるボールが投げられない。

⑥ カーブを投げれば痛くないがストレートを投げると痛い。

⑦ 試合や練習時の投球では全く痛みを感じなかったが、家に帰ってから疼くような痛みがあった。

⑧ 試合に登板して初回から5回くらいまでは全く痛みを感じていなかったが、球数が増えてきた7回以降に肩の後ろの方に嫌な痛みを感じたので降板した。

⑨ 今まで肩に痛みを感じることが無かったのに、あるときから急に痛みを感じ始め、約1ヶ月間くらい痛みが持続しているので、投球の際に腕を強く振ることができないが、現在も投げ続けている。

⑩ 足首の捻挫をしてしまったので、約3週間ほどボールを投げずに上半身のウエイトトレーニングを行っていた。その後、足首が治って練習に合流して、キャッチボールを再開してから約2週間後に肩に痛みが出てきた。

⑪ オーバースローで投げると痛いが、サイドスローで投げると痛くない。

⑫ 1ヶ月前から投球フォームを変える為に、1週間に4日ほどブルペンでピッチングをしていたら、2週間後に肩全体に重さを感じ、そのまま投げ続けていたら肩の前側に痛みが出てきた。

⑬ 守備練習のとき、外野からバックホームへ返球した際に、肩の後ろ側に激痛が1回だけ走った。そのまま投球を続けていたら、肩が痛くて腕をおもいきり振れないくらい痛みが酷くなった。



野球肩障害のご相談には、上記のように様々なケースがあります。

もちろん、ここに挙げた例だけでは済みませんが、それくらい野球というスポーツでは、「肩関節」に異常を訴える場面が多くなるということなのです。

またピッチャー、キャッチャー、内野手、外野手といった各ポジションによっては、同じような肩の痛みであっても、その対応方法には違いが出てくるわけですが、それはポジションによっては試合や練習時の投球数に違いがあることや、よりバッティング練習の為にバット・スイングを多くやらなくてはならないとか、ピッチャーやキャッチャーでは、より試合時や練習時に投球数が多くなるといったポジションによる状況の違いがある為です。

それから高校球児となれば、もし現在肩に痛みを感じているとしても、自分自身の置かれた立場(すでに背番号を貰っている等)によって、投球を休めないし休みたくない・・・といった自己の願望も加味されますから、詳細は省きますが私がここで施療を行う場面では、小学生、中学生、高校生、大学生の野球選手達の施療対応には、全く違った面を見せる場合も当然あります。

プロ野球選手となった選手達の中には、そういった学生時代に「肩痛を経験してきた人達」も沢山いました。

甲子園大会に出場し、自分のポジションに責任を持ってボールを投げぬく為に、痛み止めの注射を12回も打って投げてきた人。

また世界大会に出場が決まり、どうしても肩の痛みを現場で申告せず、大会が終了するまで我慢して投げてきた人・・・など。

そうやって肩が痛くても何らかの方法で痛みを鎮めながら野球を続けて、その為に実力が認められてプロ野球選手になってきた人を私は沢山見てきました。

だから現在、肩に痛みがあるけれども致命傷さえ負うことがなければ、もしかすると痛めた肩を回復させることも可能でしょうし、その上で実力を発揮することが出来れば、プロの世界に認められるかもしれません。

そういう意味では、何が何でも痛めている肩を休める為に、大切な大会出場を諦めたり、レギュラーの座を放棄することは、その選手にとって「無」を意味することになる場合もあるでしょう。

しかし成長期である小学生・中学生までのお子さん達にとっては、まだまだ先がありますから細心の注意を払っていかなくてはならないはずです。

プロ野球の世界では、「選手」というのはチームの「財産」ですから、その価値を高めていく為に「練習」というものがある・・・そういうことになります。練習によって各選手達の実力が上がり、毎年行われているペナントレースではどこのチームも優勝を目指しています。

そして中には「痛みを我慢しながらプレーを続けている選手」がいるかもしれませんが、その痛みを乗り越えるだけの力が選手自身に無ければ、それは「ただの故障者・怪我人」で終わってしまいます。

厳しいようですが、そういった故障やケガの為にチームを去るばかりでは無く、プロ野球の世界を去らなければならない選手達も毎年大勢辞めていくのが、真のプロの世界の厳しさとも云えるでしょう。

学生野球・・・即ち、教育の一環として行われている「野球の世界」では、各野球団体における大会があり、その頂点を目指す為に学生選手達は日々練習・試合に打ち込んでいますが、彼らも野球の世界にとって大切な「財産」だと思っています。

だから本来であれば、無理はさせたくないし、無理を押し通して痛めた肩を更に酷使することは絶対に辞めさせるべきでなはいかと考えながら、私は施療をこれまで続けてきました。

「治す」為に一番必要なものは、まず「時間」です。

その時間とは、人間が根本的に治癒していく為に必要な時間のことなのです

その回復させる為の時間を如何に短縮させるのか・・・そこで一番必要なのが「周囲の理解と故障やケガに対する考え方・対応方法」です。

昔、私がプロ野球の世界でトレーナーを行っていたとき、ある選手が試合中にアクシデントで膝の後十字靱帯を切ってしまったことがありました。そしてその選手の状態では翌日の試合はおろか、2週間先の試合でさえ出場は困難ですから、私は当時の監督に「○○をファームへ降ろしてください。」と告げました。

しかしその監督は激怒して、「テーピングでも何でもして明日試合に出せないのか!」と言ったのです。

もちろん私はその要請を断りました。その選手は今でもファイターズのユニフォームを着て元気にプレーしていますが、当時の監督はチームを去ってから長い年月が経った今でもユニフォームを着ることはありません。

そのようにして、チームの指揮官が選手の存在をどのような存在として捉え、チームを動かしているのか?ということは、一番大切な部分であり、野球の世界の一番の財産である「選手達」を生かすも殺すも「総指揮官である監督」に委ねられている・・・ということではないかと私は思っています。

2006年、ファイターズはパ・リーグ制覇、日本シリーズ優勝、アジア大会優勝という3つの勲章を手にすることが出来ました。そしてその年はファイターズというチームが一番故障者を出さなかった年でもありましたし、その時にチームの総指揮を執っていたのが、あの外国人監督であるヒルマンさんだったのです。

彼ほど選手達を大切に考え行動を起こしてきた人物を私は知りませんが、そのようにして、チームの財産である選手達を「生かす」為には、やはり「選手達を大切にする心と行動」が無くてはならない・・・という一番良い例だと思っています。

だからこそ選手達はその心と行動に応えてくれたのではないでしょうか。

話がだいぶ逸れましたが、勝負の世界において故障者や怪我人というのは、ある面では「マイナス要素」かもしれません。そしてそのマイナス要素を出来るだけ減らす為に私達のようなトレーナーという職業があるといっても過言ではありません。

私はそうやってプロ・スポーツの世界の中で感じてきた、今でも大切にしている事があるのですが、それは「選手達を壊すのは簡単なことだ、理に叶わないことを続けさせていれば、選手達は簡単に壊れてしまうし、壊れた選手を治すには時間が必要になってしまう。それならば壊さないように、壊れないようにプレーさせてあげなくては。」ということです。

一番初めに例を挙げさせて頂いた様々なケースの野球肩障害に限らず、スポーツを行っていれば、肘や手首、背中、腰、股関節、膝、足首などの関節、全身の各筋肉、各靱帯、軟骨、骨、皮膚など・・・・生身の人間であれば、どこだって故障を起こす可能性があるし、アクシデントでケガを起こすものです。

そのときに現場で一番初めに対応するのが、私達「トレーナー」という存在です。だからこそ責任があるし、その責任の上で様々な対応やアドバイス・指導を行いながら助言していくわけです。

もしそのような助言や指導に対し、現場の総指揮官や責任者が背を向けるならば、それは「チームに対する背任行為」であり、また選手自身がトレーナーという存在を無視したり軽視していけば、そこで既に「未来の負け」が待っている・・・そういうことではないかと私は思っています。

ここ横浜・多宝堂へやってくる学生選手の皆さんは、もちろん全てが全て野球で飯を食っていく人達ばかりではありませんが、彼らは本当に野球が好きで好きでたまらない人達ばかりです。

だからこそ一日も早く復帰したいが為に、また試合や練習に良いコンディションで望んでいく為に私の施療を受けに訪れてきます。

マンツーマンで彼らに施している施療中に、私は彼らの身体を通しながら日々の鍛錬の厳しさを感じてきました。

高校球児達は日々練習試合に明け暮れて夜遅くに帰宅しています。また小学生・中学生達は平日は学校や塾で学びながら、土日も野球・野球で休む暇も無く身体を動かしています。

「プロ野球ってこんなに長い時間練習するんだ・・。選手達はどれだけ体力があるんだろう。凄いよなぁ。」

もう20年以上前のことですが、多摩川グラウンドで初めてファイターズの練習に参加したときにそう感じました。

そしてトレーナーとして一年一年と経験を積み上げていきながら、5年経ち10年経ちプロ野球の世界も徐々に「中身」が変わっていきました。

その中身とは「練習内容やトレーニング」です。

「選手達を壊さないように、壊れないようにする」為には、彼らの身体と心を大切に鍛えていかなくてはなりません。

しかし「大切にする」というのは、「優しくする」ということではありません。

それは「選手達は自分の身体は自分で磨いて守れるようにしていきなさい・・・・ということを「チームの中で徹底させる」ということです。

誰のせいでもなく、自分自身の身体は自分で責任を持って管理していく・・・それが「選手を大切にする」ということです。

そういう意味からすれば「肩に痛みがあるけれども誰にも言わずに無理して投げている」というのは、「自己管理が出来ていない」ということになるわけです。

またもし選手が「肩が痛い」と告げてきたのに、「大丈夫か?今日だけはどうしてもプレー出来ないか?」と選手に聞くだけで詳細な肩の状態を見定めていかなければ、それも「選手管理が出来ていない」ということです。

要するに、「有耶無耶にする」とか「今日はとりあえず」というのは、全て「管理放棄」なわけですから、それでは先の結果が見えてしまいます。

だから「管理する側にしっかりと両者が立っていかなければ、真に選手達を大切にすることは出来ない」と、そういうことではないかと思うのです。

話しが長くなりましたが、いずれにしても妥協であるとか、その場凌ぎの管理だけでは、やはり「チームは強くならないし、選手達も真に生きない」ということではないでしょうか。

深い意味は込めませんが、ここにいらっしゃる皆さんが、そういった私の考え方に同意され、そして信頼を向けて下さっているということを日々強く感じながら施療を行わせて頂けることに本当に感謝しています。

今日は私自身の過去の仕事における場面から培ってきた大切だと感じてきたことを少しだけお話しさせていただきました。

あと数日でゴールデンウィーク突入となりますが、この4月中は本当に多くの学生さん達にご来院頂きまして、ありがとうございました。また一緒にお越しくださった親御さんや指導者の皆様にも本当に感謝しております。

そしていつもこの治療院ブログを最後まで読んで下さっている皆様にも本当に感謝しております。ありがとうございました。

ファイターズはベテラン選手がファームに下りていたり、大谷選手が怪我をして戦列を離れてしまっていますが、昨日のホークス戦を観戦しながらチームの底力を感じましたね。

これから始まる交流戦が楽しみです。(by 院長)