小さな星を見守りつつ・・・
治療院を開業して一番初めに感じたことは、本当に色んなご相談をクライアントさん達からお受けする・・・ということです。特にプロ選手を含め、全てのスポーツ選手に共通してお受けしてきたのは【スポーツによる身体的な故障】です。
そしてまず一番に考えておかなければならないのは【故障】というのは【病気】ではありませんが、スポーツ選手達の中には、自分自身の体の不調や故障によって【精神的な病】に陥る人も珍しくないのです。
故障によってスポーツ活動に不足が生じてくると、選手達は非常に精神的なストレスを溜め込むようになってしまうことが良くあるのです。
そしてストレスのはけ口が見つからず、故障から上手く立ち直れない事で自暴自棄になってしまうことはとてもマイナスです。だから選手がそんなときにはスポーツ・トレーナーとしての職務としてだけではなく【人間的な関わり】が大切になってきます。
プロ野球の世界で多くの選手達の身体的な故障や怪我と共に向き合ってきましたが、故障による精神的なストレスを抱えた選手達をどのようなプロセスによって立ち直らせていくのか?・・・ということは重要な課題でした。それと同じように治療院にやってくるクライアントさん達の精神的なストレスを心から察していくことは施療家としても本当に大切なことです。
私がファイターズのファームのトレーナー職務に付いていた時期に、ある選手が私に小さな声でこんなことを言ったことがありました。
「もうこの○○は完全に良くならないんでしょうね・・・」
私は少し考えてから「大丈夫だよ。時間が経てば絶対に良くなるから。焦ったって怪我は良くならないんだよ。今がどんな状態だって諦めなきゃ絶対に良くなるんだから。いつかは1軍のマウンドで投げてるお前の姿を見たいと思っている沢山のファンが待ってるんだよ。だからその人達の為にも絶対に諦めちゃ駄目なんだよ。いつかは必ず良くなって投げられるようになるんだから・・」
プロ野球の1軍の華やかな世界の裏では、故障によってユニフォームを脱がなくてはならない選手達も沢山います。そしてそういった選手達のサポートをするのも私達トレーナーの仕事です。
活躍している選手達をサポートするだけなら、これほど楽な仕事は無いよな・・・そんな事を感じた時期もありましたが、たしかに怪我や故障から選手を立ち直らせ、再びグランドに選手達を戻していくのは容易なことではありませんでした。だからこそ日々のコンディショニングの積み重ね・・・というものに対する真摯な態度が求められます。
怪我をしたり故障をする・・・そこには必ず原因があります。
それは日々の練習や試合による疲れからくる筋力の低下、機敏な反応の低下や不足、アンバランスな身体的構造、注意力の散漫、ストレスの多い身体操作などなど・・・・細かく分ければ際限が無いけれど、故障や怪我の原因は必ずあるのです。
でも過去は過去。いまさら原因を探っても怪我や故障がそれで治るわけではありません。しかしそこにスポットライトを当てるのは、「治す」為でもなく、「誰かのせい」にする為でもありません。
何故?そのような状態に陥ってしまったのかを「もう一度考える」為です。そして怪我をした理由や原因をよくよく考えながら、その次に考えなければならないことがあります。
それは「もう一度原点に戻ること」ではないかと私は考えてきました。
もう一度原点に戻る・・・
それは「何の為に今までスポーツを続けてきたのか?」というところに立ち戻っていく・・・そういうことです。プロのスポーツ選手であれば報酬を貰って職業としてのスポーツを続けて生きていかなければなりませんし、アマチュアのスポーツ選手であれば多くの大会に出場し、優勝することを目標としながら、上を目指しながら活動していかなければならないでしょう。
そして報酬を貰っているプロ選手達も、上を目指して戦っているアマチュア選手達も、同じ「スポーツ」を行っていますが、それでは「何の為に?」そのスポーツを行ってきたのでしょうか。そういった目的意識が薄れ、無くなってしまったり見えなくなってしまうことは、選手達にとって実は一番辛い状況ではないか・・・そう私はサポートを通じて感じてきたことが多かったのです。
だから故障や怪我で落ち込んでいる選手達には、「もう一度原点に戻って」とは直接言わなかったけれど、会話の中でそんな事を伝えようと努力してきたように思うのです。どんな世界であったとしても、自分の一番良いところ、自分が一番アピール出来るもの、そして自分が最高に輝いている姿・・・それが一番の宝物です。
今 現状が厳しくて、過去を振りかえってばかりいて前に進めなくなるよりも、まず原点に立ち戻ってから、次の自分自身を創っていくことが出来るならば、いつかは必ず輝きを取り戻す事が出来るはずです。
そうなれるように、まず「諦めない」で欲しいのです。
そして・・・周囲の人達の励ましを自分自身の飛躍のバネにしていく為にも「謙虚」に耳を傾けて・・・。誰も見ていないところで努力し鍛錬してきた人達というのは必ず、世に出て光輝いていくものではないでしょうか。真の勝利とは「最後まで諦めずに自分自身と戦った心の中」に築かれていくものではありませんか。
自分自身を更に輝かせていく為に・・・今 目前にある努力を共に続けていきたいものですね。心の強き姿と喜怒哀楽が多くの人達に素晴らしい感動を与えながら、頑張っている小さな星を見守りつつ・・・早朝の自宅にて(横浜・多宝堂院長)