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治療を受ける効果的な時間帯は?

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Q) マッサージや鍼などの治療を受ける場合、一日のうちで昼間に受けるのと、夜に受けるのとでは、どちらが効果が高いんですか?



A)  人間の体は自律神経(交感神経と副交感神経)という「活動的な作用を促している神経」と「非活動的な作用を促している神経」によってコントロールされています。

規則正しい生活を心がけていると、通常は朝の6時頃には「目覚めを促すホルモン」が脳内に分泌され覚醒するようになっています。起床時から約6時間くらいで交感神経の働きがピークに達しますから、その間は血圧や脈拍も上がっていくことになります。

午前中から昼にかけての時間帯というのは血圧や脈拍を上げて「さぁ!活動するぞ!」といったような活動体制になっているのですが、昼を過ぎてからおやつの時間・・・つまり午後3時くらいになってくると交感神経から副交感神経へとスイッチが切り替わる間の時間帯になってきます。

丁度、おやつの時間というのは、「そろそろ一休みして・・・」といったように、眠気を催すような時間帯になるわけですが、そこから夕方の6時くらいまでには完全に交感神経から副交感神経に入れ替わっていく時間帯となり夕方になって太陽が沈んで外が暗くなると人間の体は副交感神経優位な状態へと自然に切り替わっていきます。居眠り運転による事故というのも実はこの夕方に一番多いという統計があるのは頷けるというものです。

このように副交感神経というのは血圧や脈拍を下げて、徐々に体を休ませる方向に向わせていくという神経ですから、当然 体に「だるさを感じたり」「眠気を感じたり」「体温が低く」なっていきます。副交感神経は身体にエネルギーを蓄えるために必要な神経機能である為、身体各器官のエネルギー消費を抑える働きがあるのです。それに対して交感神経というのは、その蓄えられたエネルギーを消費して活発な行動を促していく働きであり、それらの神経の働きが一日のリズムの中で正常に規則正しく働いている・・ということが「健康」であると言えるのです。それらを考えながら施療の効果的な時間帯を考えると・・・・

例えば高血圧の人が施療を受ける場合、マッサージや鍼施療のような刺激療法に関しては午前中よりも昼の3時をまわったくらいが適当ではないかと思います。何故なら午前中は交感神経が働き血圧が高くなりやすいので刺激の強度や方法によっては血流が良くなると脳や心臓に対する負荷が加わる危険性もあるからです。

高血圧の状態で更に血圧が上昇してしまえば、当然 脳溢血や心臓発作を起しやすく、それは昼夜に関わらず注意が必要になってくるわけですが、より血圧の降下しやすい午後から夕方の時間帯に施療を行うことで、まず安心感があると言えます。朝方から昼にかけて心臓発作や脳溢血が多いということを考えれば、そのような考え方の基本となるわけですが、その反対に血圧の低い人は午前中の交感神経が優位な時間帯に施療を行うことによって血圧が上昇しやすい時間帯なのですから、施療による相乗効果によっては血圧が上昇し低血圧が改善されやすい時間帯になるということになってきます。

それから神経痛の人はどちらかというと朝の起きがけに痛みを感じやすいのですが、これは朝の6時から昼にかけては交感神経が優位になるためで、血圧や脈拍数が上がって血流も盛んになる事で神経が刺激を受けて鈍痛を自覚しやすい状況になるからです。

歯医者さんで歯の神経を抜くような治療を受ける場合には、そういう点から考えてみると夕方に治療を受けた方があまり痛みを感じなくて済むことになります。

マッサージや鍼の施療を受ける場合も神経痛に対する考え方は同じになると思います。刺激の法則を考慮した場合には弱い刺激というのは神経を鼓舞(蘇らせ興奮させるということ)し、強い刺激というのは神経を抑制(押さえ込み鎮静させるということ)させるということからも、神経痛というのは神経が興奮している状態であり、それを押さえる為の刺激・・・すなわち「強い刺激」であれば効果が高いということになります。

ですから神経痛の施療は夕方の時間帯であれば強い刺激を与えても痛みをあまり感じず、施療効果もより効果が出やすいということになるのかも知れません。また神経麻痺などに対する場合には神経痛の正反対の条件を考えると午前中の時間帯に弱い刺激で行う方が効果が出やすいということになります。

どれだけ眠れないという症状があったとしても、副交感神経が働けば人間は自ずと眠くなっていることになります。物を食べて胃袋に食物が入ってくると胃には胃液が分泌され消化を促そうとしますが、そのような胃液の分泌自体も実は副交感神経の作用によって行われています。食べた後に眠くなるというのは副交感神経が正常に働いている証拠です。

よく幼い子供が食事中に居眠りをしながらコクリコクリとしていますが、幼児期というのはまだ自律神経の働き方がとてもストレートで素直である為、副交感神経が優位になっている夜間の食事中には居眠りをしやすいことになります。

その反対に赤ちゃんの夜鳴きというのは神経が興奮して起こっているものですが、それは赤ちゃんの体内の自律神経によるコントロールが昼と夜とで上手く行えない状態があるからです。

お母さんが抱っこをして赤ちゃんをさすったり揺らしたり、または乳首をくわえさせることで泣き止ませていますが、実はその行為自体が赤ちゃんの副交感神経の働きを刺激によって促している・・ということなのです。

本当は朝から昼にかけて働かなければならない交感神経が夜中になって急に働き始めてしまった結果として夜鳴きが起こるのですが、赤ちゃんの場合には一日のサイクルの中で交感神経と副交感神経の働きが交互に何度も訪れておりますが、通常 乳児期から幼児期・小学校低学年までには自律神経の相互リズムは正常化していくことになります。

しかし赤ちゃんが午前中や昼間に大声で泣くのは自律神経の正常な働きを泣く事(強い呼吸と声を出す事、体を大きく動かしながら情動を表現することで)で発現させているわけですから、そのような状態の時にお母さんが抱っこをしてあやし過ぎてしまったり、乳首を与え過ぎてしまうと、それ自体が副交感神経を優位にさせてしまう行為となる為、赤ちゃんの正常な自律神経機能やリズムがスムーズにいかなくなってしまうことに繋がります。

それらが成人になってから自律神経障害へと結びつく原因であるという説もあるのです。自律神経の働きを知れば赤ちゃんに対する育児法も施療を行う際の時間帯や対応法なども理解できるのではないかと思います。

働きすぎで疲れが溜まって何もしたくない・・休みたい・・そう感じている人は、自ずと副交感神経が優位となって、交感神経が働きにくくなっています。

そういうときには午前中の交感神経が働かなければならない時間帯にしっかりそれが働くように仕向けてあげたいものです。

ですから施療も午前中に行いながら、その人にとって「心臓や脳に血液を送ってあげるような刺激で最後にはスッキリと目が覚めるようにして施療を終える」ことで、交感神経が昼の時間帯にゆっくりと賦活されていくようになり、その状況を積み上てあげられれば、徐々に体調を上向かせてあげられることになっていきます。

またいつも何となくイライラしていて、夜もなかなか寝付かれない人というのは、反対に交感神経ばかりが常に働きすぎていて副交感神経が働きにくくなっている状態です。

そういう人の場合には午後の3時から夜6時くらいの副交感神経が優位になる時間帯に施療を行って、「その人にとって心地よい刺激を与えながら時間をかけて徐々に眠くなっていくような刺激に切り替えて終わる」ことで、交感神経の緊張状態が徐々に解けて副交感神経を賦活させていくことが出来るのです。

施療が終わる夕方ごろには、かなりの眠気を感じるはずですので、こういった神経の興奮を伴い、気を休めることの苦手な人などは午後から夕方にかけて、若しくは夜間の施療時間帯などが適しているのではないかと思います。

その人の一日のサイクルの正常な自律神経の働きを基本に考えてみれば、施療を行う時間帯や施術内容・方法(刺激の種類や強度や波を考慮)をその都度変化させ対応していく必要性があるということが判りますね。(by 院長)