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正しいキャッチボールの考察(1)

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「速いボールを投げる能力と遠くにボールを投げる能力」は根本的に違う

元スワローズの監督兼選手を務めていた古田氏が指導する言葉にはやはり重みがあるし説得力があります。

よく野球の練習中に通りがかってお子さんたちがキャッチボールをしている姿を遠めに眺めていると、「自分の身長の3倍も4倍も高くボールを投げ上げなければ届かないくらいの距離をとってキャッチボール(遠投)をしている」ところを見かけます。

古田氏も指導されていますが、あのような遠投による投げ方で悪い癖をつけてしまうと、「体を大きく開いて投げるクセがついてしまうことが多い」ので、お子さん達の野球肩や野球肘の根本的な原因になってしまうことがあります。

確かにプロ野球の世界でも遠投を行う場合があるし、イニングの間で外野手同士が遠投を行っている姿を見ていると、「ボールを高~く」投げ上げています。

しかしこのような投球(スローイング)は「正しい体の使い方が出来上がっている」からこそ身体を痛めないのであって、外野手としての投球ウォーミングアップになっているわけです。

だからといって野球を始めたばかりのお子さん達がただプロ野球の外野手達と同じように距離をとって投げていても、「間違った投球フォーム」になってしまえば、ただただ「弊害」になるばかりで、結果的には良いスローイング動作には結びつき辛いものなのです。

低いボールで「長い距離・速いボール」を投げる

この要素を満たすようなスローイング練習の方が、実質的な形で「正しい投球動作」を生み出しやすく、また正しい形になっていなければ、最終的には「長い距離を速いボール」で投げられるようにはなれません。

イチローのレーザービームはどんな投げ方でどんなボールの軌道になっていますか?低い軌道で突き刺さる矢のようなボールを投げていませんか?





よく指導者の中には「遠投(長い距離を投げる)は下半身をしっかり使って投げなければ、届かないので・・・」といって、肩の弱いお子さん達の下半身を鍛える目的のため?に「遠投練習ばかりさせてしまうケース」もよくあると聞いています。

しかし遠投をしているお子さん達の投げ方をよくよく観察してみると、おもいきり「肘が下がっていたり」「身体が前に倒れすぎていたり」「身体がのけぞっていたり」「頭が大きくブレて身体の中心軸が無茶苦茶な状態」で投げている姿を見かけます。

お子さん達がそのような形態でボールを投げ続けていても、「ただ見ているだけで、投げ方の指導もケアも何もしない指導者」がいたりします。これではお子さん達の身体を壊しにかかっているようなもので、野球指導の根本を全く理解出来ていない・・・ということになります。

ボールを遠くに投げる能力を上げる為には、まず「お子さん達の動作を正しい形に改善する」ことから始め、もしボールを投げるときに下半身がしっかりと使えていないのであれば、「投げ方と共に正しい下半身の使い方」をまず身につけさせてから、その上で「下半身の筋力強化を別の形で行っていく」という考え方がもてれば、それがお子さんたちの投球パフォーマンスを上げ、肩や肘にケガをさせないことに繋がっていくでしょう。

お子さん達がボールを投げている姿を前から、横から、斜めから、後ろから観察してみてください。

リリース(ボールが指から離れる瞬間)時に軸足が既に地面から離れていませんか?反対側の足のつま先はどちらの方向を向いていますか?膝関節が伸びきっていたり外や内に逃げていませんか?

加速期では投球側の肘関節・肩関節と反対側の肩関節の高さは一直線になっていますか?

テイクバックでは前腕と手首はどちらを向きながら上っていきますか?

トップではボールがどちら側を向いていますか?肘の高さはどこまで上ってきましたか?

ボールをしっかり握っていますか?またボールを強く握りしめすぎていませんか?

全体的に観てボールを投げるときに身体の捻り動作は最後までしっかり出来ていますか?中途半端な捻り動作で終わっていませんか?軸足側の股関節と反対側の股関節はどのような動きをしていますか?

始動時は軸足に体重がしっかり乗っていますか?また反対側の下肢はどのような上り方・下がり方になっていますか?

正しいスローイングの形をお子さん達がマスター出来ていれば、そこから更に上の要素へと投球練習の内容を高めていくことができます。そして自分に足りない体力的な要素を知ることにも繋がっていくでしょう。

どんなに速いボールを投げられるピッチャーであっても、同時に遠投力も非常に優れているとは限りません。それと同じように短距離走を一番速く走れる選手が長距離走でも一番で走れるとは限りません。

だからお子さん達の資質にも当然違いがあるはずです。

「良いところを更に伸ばす」のであれば、出来ない事をやらせるよりも、今 目の前で「実現可能なことを積み上げていく」ことに目を向けてみましょう。

お子さん達が出来るか出来ないかは、やはりやってみなければ解らないことなのです。理解出来るような指導方法と反復練習による脳と身体における神経回路さえ出来上がってしまえば、どんなお子さんでも1ヶ月かかろうと1年かかろうとも、最後までどちら側(指導者もお子さんも)も諦めなければ「正しい形、良い形」を修得できるはずです。(by 院長)