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少年期の野球肩を治す(1)中2年・捕手→投手のケース

Jsteiwodkgkskoa82


中学校2年生・男子

<野球歴>

*小学校2年生より軟式野球開始、中学軟式→捕手からポジション変更で投手

<経過>

* 1週間前より投球時(特にピッチング)に肩痛を自覚した為、投球抑制
* 投球(ピッチング)でテイクバック期から加速期にかけて肩痛発現
* 整形外科受診なく直接当治療院来院 

<主訴経過及び投球頻度>

* 1ヶ月前に捕手から投手にポジション変更
* 投手にポジション変更後、当初は肩の自覚異常なし
* 2週間前より投球時にテイクバックが取り辛い感じあり
* 1週間前から肩に痛み出現
* ピッチングは1回30球~60球で週約4回程度

<現在の肩の状態>

* 肩関節の可動域制限あり(外転及び内・外旋制限著明)
* 肩関節・肩峰下部付近、圧痛、運動痛あり(主に外転運動時に痛み著明)
* 肩・三角筋・中部繊維及び僧帽筋部に筋硬直著明
* ヤーガソン&スピード&アームドロップテスト異常なし
* インピンジメント&SLAPテスト異常なし
* ダウバーン・サインで疼痛誘発著明
* 肩インナー・テストで棘上筋に疼痛誘発少程
* ルーズ・テスト(前・後・下方)異常なし
* 握力低下/中程あり
* 前腕回外運動/硬さ著明

<施療>

* 施術内容:カッピング、鍼パルス通電療法、単刺入鍼、スポーツマッサージ、関節マニュピレーション、その他(肩関節リハ指導)
* 施術時間:1回約1時間15分程度
* 上記施術:3週間以内で3回施療継続
* 3週間でほぼ状態改善

<改善後の肩の状態>

* 肩関節の可動域制限緩和
* 肩関節・肩峰下部付近、圧痛、運動痛なし
* 肩・三角筋・中部繊維及び僧帽筋部に筋柔軟性回復
* ヤーガソン&スピード&アームドロップテスト異常なし
* インピンジメント&SLAPテスト異常なし
* ダウバーン・サイン異常なし
* 肩インナー・テスト異常なし
* ルーズ・テスト(前・後・下方)異常なし
* 握力低下/小程あり
* 前腕回外運動/異常なし

* 上記緩和状態を確認後/投球動作確認→肩関節痛緩和

<改善後の運動経過>

* 治療終了後、2日後より投球再開(15m~20m以内・60%の力で投球指標)
* 投球再開より2週間で25m以内80%の力で投球指標
* 3週間以後、塁間まで全力投球指標
* 4週間以後、ブルペン・スタンディング再開1回20球~60球指標
* 1ヶ月目以後、ブルペン・ピッチング1回30球~70球指標
* 投球再開から3週間経過以後まで3日投球1日ノースロー
* 4週間以後から1日置きブルペン投球

<投球リハ再開後の肩の状態>

* 投球リハ開始から3週間後に経過観察のため再来院
* 現在、塁間全力投球可、肩関節周囲に若干筋緊張認めるも施療後緩和
* 関節可動域等に異常なく、全テストクリア
* 投球再開から1ヶ月経過/指導者より内野手で様子見との判断
* 1ヶ月経過後より代打で試合復帰、以後、捕手復帰
* 2ヵ月後に再来院・肩の状態異常なし



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中学生軟式野球を行っている選手で捕手から投手へポジションを変更後、ピッチング及びキャッチボールで肩に痛みを訴えて来院する。

理学テストから肩峰下滑液包炎を疑い、施療開始。

当初、肩関節周囲に炎症徴候及び筋疲労性の痛みも同時に認めた為、それらの状態を緩和させていく目的で施療継続する。

施療期間中は片手スイング(健側の腕で)を推奨も、本人談では両手でスイング行い肩に痛みが無かった様子で打撃練習は継続、守備練習は下手投げで練習参加していた様子。

尚、打撃練習を行ったことで肩関節部に悪化は認めなかったものの筋疲労は若干認めたので、その後の注意を促した。

施療と共に肩関節の安定化や筋柔軟性を維持するために、肩リハ継続を初回に指導、肩の状態が改善し全力投球が可能になった後も、投球後のアイシング及び肩リハ、ストレッチをしっかりと行うよう指導する。

半年後には捕手を継続しており、試合数が増えていたこともあり(レギュラーだったので)、肩に張りを訴え来院するが、現状で投球抑制の必要は無いが、もともと筋肉の緊張が強くなってしまうタイプなので、肩関節のコンディションを良好に保つため1ヶ月~2ヶ月に一度、施療継続をアドバイス。施療後の投球動作時も肩関節の自覚異常等なくプレー継続可能と判断した。

今回のケースは捕手から投手へポジションを変更した後に起こった投球肩関節障害であり、肩関節悪化の経緯としては、捕手から急に投手へ変わった為に投球フォームの安定化が短期間で成しえなかったこと、また投球強度や頻度が変わったことで肩インナー・アウターのバランスが徐々に崩れていったことが伺えた。

もともとその選手が持っている肩関節の可動域も投手を継続するにはやや難しい部分もある・・・といったことを同時に併せ考えておく必要があったのではないか?といった個人的な意見もあるが、そのような複合的な要因によって発生した投球障害のケースではなかったのかと思う。(by 院長)