太もも前面打撲による長引く痛みや筋硬直への対応・処置・治療法/スポーツで発生する外傷・チャーリーホース
Charley horse(チャーリー・ホース)=「筋肉痛」「こむらがえり=筋痙攣」「筋硬直」の意
サッカーやラグビーなどコンタクト・スポーツ(相手選手と衝突する場面の多いスポーツ)による試合中や練習中に発生する「太もも前面への強い打撲後に生じた筋痙攣、筋硬直、筋肉痛」のことをアメリカの俗名称では「チャーリーホース」と呼んでいます。
プロ野球選手の中にはデッドボールが原因で上肢や下肢、背中や臀部などにチャーリー・ホースが生じるケースもありますが、通常、スポーツ障害でチャーリー・ホースと言うと「大腿部前面の打撲によって生じた筋硬直や痛みなどの俗称」として呼ばれています。
特にこの大腿部前面(ふとももの前面)に強い打撲が生じると、大腿四頭筋部に強い筋硬直が起こるケースが多く、その後に「膝を曲げるのが困難」になるケースもあります。
初期対応としては大腿前面部に強い打撲痛が生じているような場合には、まず筋断裂が生じていないかを確認してから、そのような状態で無ければ「膝関節を曲げた状態でRICE処置=患部を冷やしながら圧迫を加え、患部を心臓より高い位置にして休ませる」を施していきます。
これは急性外傷に対する一番初めに行われる初期対応ですが、もし「筋断裂が発生している」・・と疑われる場合には、傷めた筋肉を縮めた状態でアイシングするようにして下さい。筋断裂が発生した場合には、痛みの出ている付近の筋肉の皮膚表面を指でなぞってみると陥凹が触知できることがありますし、筋断裂が生じていると疑われるケースでは、念のために整形外科で精密検査(MRI)を受け、その後の適切な対応や処置を受けた方が良いでしょう。
筋断裂が無い場合でも大腿前面部の打撲によって生じた筋部の痛みは2週間から3週間くらい残るケースもあって、その後に「打撲部の筋肉に強度の筋硬直があれば膝が曲げにくくなったり、完全に曲げられない状態が長引く」ケースもあるのです。
初期段階で適切な対応や処置を行っておかないと、上記のような後遺症状のためにスポーツ活動への復帰が遅れたり、その後の運動時に大きな支障を来たすことになり、一般の方々の打撲外傷の場合でも、日常生活で支障を来たす場合があります。
尚、チャーリー・ホースが重症に陥ってしまったケースでは、筋肉内における瘢痕組織・血腫が石灰化をおこしながら「骨化性筋炎=筋肉の中にカルシウムが沈着して、それが骨化してしまう状態=筋肉内に骨が形成されてしまうこと」に移行していくケースもあるので、大腿前面部の打撲に際しては適切な判断や対応が求められると言えます。
これらのような打撲症に対応する場面では、まず筋肉内に血腫(打撲によって生じた内出血のかたまり)が認められる場合、整形外科などで抜血処置(注射器で内出血を抜く)が施され、患部の筋肉を弾性包帯で保護し、その上で患側下肢に負担が及ばないよう松葉杖歩行や車椅子を薦められることが多くなります。
もし血腫(血の固まり)が筋肉内に長い間残留してしまうと、患部付近の血流障害を生じさせながら、筋組織修復を大幅に遅らせると共に、急性期が過ぎ筋肉の強い痛みが軽減してからも筋機能に支障を来たすような状態が長引くことになります。またその上で膝が曲げにくくなったり、歩行時の痛みが継続してしまうケースがあるのです。
先日、大腿前面部に打撲を受け、その後に「膝の曲がりが悪くて困っている」といったご相談でご来院いただいた女性クライアントさんもおりましたが、受傷後数週間を経ていて、大腿前面の中央部の筋硬直はかなり酷い状態でした。
そのため膝関節は完全伸展位から30度程度しか屈曲(曲げる)することが出来ない状態だったので、歩行も苦慮するようでしたが、このような場合には患部に対してあまり強い刺激は加えずに、温熱療法等により筋深部を温めながらハリ治療を併行して行ってあげることで「筋肉内に残ったダメージ」を和らげ筋柔軟性の回復に繋がっていくことになります。
また「打撲した場所をまだ冷やした方が良いのでしょうか?」とのご質問もありましたが、患部を直接触診した感じでは、皮膚表面の熱感は無く、皮膚の色からは「血流障害」が示唆されており、このような状態では患部周辺を「温める」ことによって、患部組織の修復を促すことを主目的に治療を行います。
それから大腿前面部の筋硬直がかなり酷い状態なので膝を曲げる動作が困難ですが、このような状態のときに「無理に筋肉を引き伸ばそうとしても=強いストレッチを行おうとしても」そう簡単には筋肉が伸展(伸びる)することはありませんし、そのような無理なストレッチを行えば筋の伸張反射がすぐに発生してしまうので、このような段階では行わない方が賢明です。
今回行ったようなハリ治療で患部周辺組織への血流が徐々に改善しながら筋肉の柔軟性は改善をみせ自然に伸びるようになっていきますから、その上で「痛みの出ない範囲」で患部のストレッチを徐々に行うようにしましょう。
始めにもお話ししましたが、私がプロ野球の世界で見てきた数多くの外傷の中でも、このような筋硬直を伴うような打撲痛に関しては「ハリ治療」と「温熱療法」が一番筋機能の回復や疼痛緩和時期を早めていました。ただしこれらの治療は「適切な段階から開始しなければならない」のであって、時期を逸したり、急性期に行ったりすれば、やはり「患部に二次的な障害が発生する可能性もある」ので、外傷初期段階から急性期を過ぎる時期を的確に判断していく必要性があると言えますし、医療機関で精査が必要であれば、まず「適切な診断」を受けた後に施療を行うことが大切だと言えます。
最後に・・・患部回復が困難なケースの際には、適切な時期に精密検査(MRI検査など)を再度受けるなどして、骨化性筋炎のような二次的障害へと移行する危険性がないかどうかを必ずドクターにチェックして貰うようにして欲しいものです。(by 院長)